で、いよいよそのときは来た。
女医さんに「最後の食事はステーキにしました」と言ったら「最後って…w」と笑われた。
治療台に座り、レントゲンを前に先生が治療について語る。
ふと治療台に置かれた器具を見てみると、ノミとかペンチのようなものとか、スーパービバホームの日曜大工コーナーみたいな品揃えである。コレを見ただけで死ねるというものだ。
女医さんは淡々と語る。
「親知らず、歯茎に埋もれてます。これは斬って親知らずを出します」
はい、いきなりの「しのせんこく」。10が頭上に灯る。
「親知らずの下に、なんとかという神経の管が通っており、まれになんですが、これが傷つき、痺れみたいなものが残ることがあります」
…8になる。
そうなったら、治るんですよね? と小生。
ビタミン剤などを投与して、治していきます。と女医さん。
…6。
「術中は麻酔を使うので、痛く無いのですが、終わった後、痛いです」
カルテに痛いと書く。
…4。
「腫れます」
カルテに腫れと書く。
…3。
「口が開けにくくなります」
カルテに嚥下なんとかと難しい漢字を書く。
…2。
「そして」
先生まだあるんですか! もう頭上の数値は2です! 死にそうなんです!
と、術後に起こり得るであろう恐ろしいことを淡々と説明してくれた。まあ覚悟しなさいということなのだろう。
で、すっかりと忘れていたのだが、ここは大学病院なのである。
歯科の卵たちが、小生の治療台の周りに集結しだした。
治療を、見るというのである。
まあ、手を出さないだけましか… と思ったら、その直後驚愕の事実が。
突然背後から「よろしく!」と男の先生登場。
聞けば、女医さんだと思っていた先生は「この先生にサポートしてもらいます」とか言う。彼女もまだ研修中の身らしい。
だ、だだだ、だいじょうぶなのだろうか…? この女医さんに、俺の歯を! まかせてもっ…!
頭上の数値が1を示した。
しかし、もう何名にも囲まれ、逃げ場は無い。遂行してもらうしかない。
小生は言っちゃいました。
小生「先生、ボクは男ですが非常に怖がりです。痛いの嫌なんです。チキンなんです。そこのところ一つご配慮いただきたく」
女医「そうですか。でもこういうのってむしろ女の人のほうが強いんですよ。」
小生「たしかに、先生は強そうですね!」
女医「…。痛かったらすぐに手を挙げてね」
一言余計だっただろうか。
いよいよ、麻酔登場だ。
ブスブスーっと針を刺すとき多少痛いが、これくらいは我慢の許容範囲である。
麻酔の段階ではパーフェクトな出来。
なかなか敏腕な女医さんなのかも知れん。
麻酔が効くまでの間、5分かかるというので、しばらく放置プレイ。
先生たちはどこか行ったが、卵君たちはその場を動かず、小生を見つめるだけ。
女の子もいたので、こりゃどうも照れるね。
で、5分経ち、麻酔も順調に効いていることを確認し、いよいよ開始。
抜く歯は、2本! 右奥歯と、その横の親知らず。
さあ!いざ!
ザクザク! ああああああ、きってる! 歯茎を切ってる!
ぎゃぎゃぎゃーーーー!(器具の回転音) 分割してる! 歯を分割してる!
ぐ、ぐぐぐっっ…(歯をつかんでぬく音) やっぱり力任せなんですね!
ガリガリガリッ! ああああ、歯を! 骨か? なんだかわかんないけど! 削ってる!
まあ、痛みはさほど無いんだけど、口開けっ放しでこれは辛い。まさに死闘。
ぎゃぎゃぎゃーーーー!(器具の回転音)
男の先生「そこはいくら掘っても意味無いよ、ココを掘るんだ」
ぎゅわわわーん!!!
女医「なるほど!わかりました!」
完全に小生、モルモットです!
だが、抜歯の儀も終わりを迎えるにつれ
男の先生「ここ、いたいでしょ!!」
ぐぐぐぐっ! (歯をおしたりひっぱったり)
小生「ひた、ひっひたひたひ!」 (いたい、いたい、といっている)
男の先生「シンマだ! シンマもってこい!」
本日、何度このシンマという言葉を聞いたことか…
ナンデスカ、シンマ。新羅カンパニーですか?俺FF7以降やった事ないのに、なんでこんな単語知ってますか? そういえばおれの頭上の数値はどうなっているのかな?
そんなことをグダグダ考えつつ、ついに
男の先生「よし、塩水で洗浄して!」
ようやく終わりが見えた! のか?
本当に塩の味がした水で洗われ、糸で縫っている。
女医さんがやってくれているので、まるでお裁縫のようだ。
俺のYシャツのボタンをつけてくれてるんなら、嬉しいのだがな。
口の中のお裁縫が終わり、女医さんが男の先生に見せる。
男の先生「よし、いいだろう!」
そして、「お疲れ様でした~」の一言がっ!
この言葉をどれだけ待ち焦がれたことか…
台の上には、3分割された奥歯と、4分割された親知らずがあった。
男の先生「虫歯が想像以上にぼろぼろで、つかむとすぐ折れちゃうから、抜くの大変だった。ごめんね」
あら。親知らずよりも虫歯が大変だったような言い方。
1時間ほどであろうか。
ながい、時間であった。
ガーゼを患部にあて、かんでといわれる。
20分くらい、止血をするという。
その間に、これを読んでいてくださいと、紙を渡される。
「ぜひ、おまもりください」
親知らずを抜いた後の注意事項をまとめた紙である。
つばを強く吐くな、うがいをするな、刺激物や硬いものは食べるな、など、いろいろと書いてある。
血は、止まってもまた出ることが多々あるらしい。血便とかで見慣れているとはいえ、血は、嫌だなぁ。
20分後、いいでしょう、ということになり、そそくさと退出した。
薬をもらい、痛み止めはその場で飲んでと先生に言われたので、もらった瞬間に飲んだ。
病院を出たときは、麻酔がまだ効いていたんだろう、痛くなかったのだが…

この鬱になるような新御茶ノ水駅のエスカレーターを下っているうちにだんだんと痛くなり始め、町屋あたりでは泣きそうになるほど痛くなっている。痛み止め効いてないじゃ~ん!
しかし、徐々に痛みは和らぎ(痛み止めが効いてきたのだろうか)、なんとか今こうして、長文を入力している次第である。
ちなみに、治療代は、5210円(薬代別)でした。
2本も抜いた割には、意外と安かったかな?
明日、いつも行っている歯医者に消毒してもらいに行ってきます。
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